INTERVIEWスペシャルインタビュー

岸谷香 「Dialogue~涙の理由~」発売記念 スペシャルインタビュー

ライター:長谷川誠

岸谷香の50代最初の作品となる『Dialogue~涙の理由~』は、チェロと彼女との織りなす豊潤な音楽が真空パックされた作品。
プレミアムという言葉がぴったりな作品が完成した!

このアルバムで共演しているチェリストは、江口心一。
ふたりの初めての出会いは岸谷の友人でもあるヴァイオリニストの高嶋ちさ子が中心となって開催している“めざましクラシックス”のステージだった。
岸谷が出演した際、共演したカルテットのチェリストが江口で、その後交流を深め、2015年にビルボード東京で開催された岸谷のライブに江口がゲストとして参加、さらにその翌年は3本のステージで共演している。ジャンルの垣根を越えてのコラボレーションだが、ごく自然な流れから実現したと彼女は説明する。

 

「私はもともとクラシック楽器が大好きで、チェロって素晴らしい楽器だと思っていたんですね。それで“私のステージでチェロを弾くのはどうですか?”と江口さんに聞いたら、“いいと思います”と。最初は、2年前ビルボード東京のライブにゲストとして3曲弾いていただいたんですね。私自身、生のチェロと一緒に演奏できることにとっても感動してしまって、去年はついに、東京・名古屋・大阪と3本に出演していただき、“せっかくだから作品として残したいよね”ということで今回のようなことに。」

 

収録されているのは新曲2曲、提供曲1曲、PRINCESS PRINCESS時代の1曲、ソロのセルフカバー2曲の合わせて6曲。1曲1曲の歌の世界が濃密で、聴き終わった時に深い余韻が残る。
どの曲も実にヒューマンで、今の彼女だからこその輝きと深みと説得力を備えているのだ。
 

タイトルはこんないきさつから付けられた。
「制作の打ち合わせ中に“いろんな涙の理由がありますけど・・・”と若手スタッフが熱く語っていたんです。
その“涙の理由”って言葉、いいなと思ったんですよ。さらに、デザインする段階で、もうひとつなんか、英語もほしいなという話になり、“Dialogue”という言葉が浮かんできたんです。偶然にも、今回アレンジを手がけてくれたsugarbeansくんが、レコーディングの時”『パパ』をアレンジする時、ピアノとチェロが会話するみたいな譜面を書ければと進めていた”なんてことも言ってくれていて、そんな意味でも“Dialogue”、ぴったりだなと思いました。
制作が進むほどに、私と江口さん、sugarbeansくんの信頼関係もどんどん深まっていって。江口さんもクラシック畑の人とは違うsugarbeansくんの譜面が新鮮でおもしろかったみたいで。sugarbeansくんも“僕、チェロも大好きなんですが、僕の書いた譜面が江口さんの演奏でこんなに素敵になっちゃって”と感動して。
全員が感動しながら作業する幸せなレコーディングでした」

 

音楽の会話を通じて、チェロという楽器の奥の深さ、懐の深さが彼女のミュージシャンとしての本能をさらなる覚醒へと導いているところもありそうだ。これは音楽への愛と情熱が詰まった作品であると同時に、50歳を迎えた彼女の新たなる音楽の冒険の旅の始まりを告げる作品でもあるだろう。

 

「これから“ひとり旅”のツアーに出るんですが、その手土産にぴったりの作品になりました。ここ数年、やりたいことがどんどん増えているんですよ。年々広がってきて、知らなかった世界をたくさん見ることで、さらに興味も湧いている。何をやっても、自分は自分だな、最後には歌で責任を取るしかないなって気付いてから、さらにいろんなことを思い切ってやれるようになっていますね。好きだという気持ちがあれば、そこにはリスペクトがあるわけだから、ジャンルに囚われず、やりたいことはどんどんやっていこうと思っています」

 

『Dialogue~涙の理由~』を聴くことは
素晴らしい体験となっていくに違いない。
聴き惚れたり、感動したり、刺激を受けたり、考えさせられたり。
そしてこの “音楽のDialogue”は聴き手にも波及していくだろう。

 

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